有名なハンガリー料理を紹介する前に、ひとことお断りしておかなければならないことがあります。それは、伝統的ハンガリー料理は、特に最近の料理に慣れた人には、鉄のような意志を持つと人だけにしかお勧めできないということです。なぜなら、ハンガリー料理は、あまりにも「危険な魅力」に満ちているため、その人が長い時間をかけて築き上げた食への哲学がもろくも崩れ去ってしまうからです。
 初めてハンガリー料理を味わった人は、ハンガリー料理はスパイスをたっぷり使い、その上しつこいという思い込みを持ち、その結果、出された料理が辛すぎたり、脂っこすぎないかと確かめずにはいられなくなるようです。これも困ったことですが、もっと問題なのは、疑うことを知らない人が、料理を一目見た時に、その料理がいつも食べている刺激の少ない料理と同じだと思ってしまうことです。ハンガリー料理の最大の「落し穴」はこの点にありますので、十分な注意が必要です。
 ハンガリーのコックは、ハンガリー人気質にもれずとても独創的な考え方をするので、ハンガリー料理も実に多彩。中には「勇敢な人」もいて、メニューにある馴染みのある料理を避け、土地の人しか知らないような料理にトライしたりするようです。
 ハンガリー料理の中で最も「刺激的」な料理の一つがハラース・レー、つまり漁師のスープと名付けられた魚スープです。ハラース・レーには何種類かの魚を素材として作られるいくつかのタイプがあります。
 この料理の真髄は、魚そのものではなく、オニオンやその他の野菜、パプリカや赤トウガラシなどのスパイスを好みに応じて加えた真っ赤で)濃厚なスープ。このスープの二つめの大きな特徴は、できる限り熱くして食べることと、スパイシーなパプリカにあります。この料理に挑戦するには十分な準備が必要です。火のような辛さを抑えるために多めのパンと飲み物を用意したほうがいいでしよう。特にこの辛さを抑えるための最良の飲み物がハンガリーワインですが、これがまた別な意味で「落し穴」になります。そのあたりについてはまた後で詳しく説明することにしましよう。
 変わった料理はどうも、という方には、パプリカーシュ・チルケ(パプリカソース付煮込みチキン)をお勧めします。この料理には、サワークリームを加えマイルドな味に仕上げたものもあります。また鳥肉以外に豚肉、牛肉、子牛の肉もしくはラム肉を素材に作られる同じような料理があり、すべて「パプリカーシュ」という名称で呼ばれています。
 この他にもすばらしい料理は多々ありますが、まずは今ご紹介したような料理を一度試してみて下さい。絶対に失望することはないと思います。
 ハンガリーの食文化についてはとりあえずこのくらいにしておきましよう。ところで、あなたはハンがリー料理とハンガリーワイン、そしてジプシー音楽がとてもマッチすることを知っていますか。ジプシー音楽が、ナイフとフォーク、皿とナプキン同様、ハンガリー料理のテーブルには欠かせないことをお忘れなく。数々の料理を写真でお楽しみください。